繋靭帯炎の競走馬のエコー

春の大きなレースに出走した3歳サラブレッド。競走後に跛行し競馬場で
レントゲン検査を受けたが、骨には異常がなかった。跛行は左前だったが
トレセンに帰厩後はなおっていた。右前の屈腱部の皮膚に血管が走っているので、エコー検査を依頼された。始めに浅屈腱をスキャンするも異常はない。
次に繋靭帯をスキャンすると驚いた事に上から下まで真っ黒。
触診では、腫れも疼痛も感じなかったが、こりゃ重傷です。

IMG_2499分かり難いが、オレンジの線で囲ったところが繋靭帯。中心が黒く抜けている。
繋靭帯炎のエコー検査は慣れていないと結構難しいが、これなら誰でも分かるでしょう。
繋靭帯炎のエコー検査は特にフォーカスを繋靭帯にあわせて撮らなければ正確な診断は不可能。触診で分からなくても繋靭帯炎のウマは沢山いる!

馬の後肢の跛行と診断麻酔

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【この写真は別症例】

当クリニックでは,跛行診断で年間多数の診断麻酔をやっている。
さすがに後肢は少ない。
今回は再入厩時より左後の跛行が良くならず、
触診で異常が分からない競走馬に診断麻酔をすることにした。
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【本症例とは別のウマの神経ブロック】

競走馬の場合、跛行の原因のほとんどは、
前肢なら腕節以下、後肢なら飛節以下とされている。
これは世界の常識であるが、掟破りのウマ獣医は多い。特に日本では!
このウマは、触診、レントゲン検査では、どこも異常は無い。

最初に飛節の遠位の関節(足根中足関節)を麻酔するも跛行は変わらず。
次に外側踵神経をブロック。変わらず。

翌日、脛骨神経、腓骨神経をブロック。
速歩で跛行が半減する。これで、跛行の原因箇所が飛節以下とわかる。

検査3日目。
トレセンから牧場に出す前に原因を知りたいと、
調教師の強い依頼で飛節の残り2カ所に関節麻酔。
足根間関節でやっと跛行が80%近く消失。

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今回の症例は、調教師の強い希望で最後まで検査をすることができ、
原因箇所が特定できた。
跛行診断で診断麻酔を厩舎で実施する時は、原因をはっきりさせ、治療をし、
しっかり直してレースに使うという調教師の気持ちがないと、
時間をかけた診断、検査は出来ない。
難解な検査が獣医師のスキルアップにもつながる。

○○調教師ありがとう! 最後まで検査ができました。